地味にさりげなく組織力をアップさせるIDカードストラップ

社員証などの用途にIDカードを用いるのは今や一般的です。そしてそのIDカードを収めるケースを首から下げるときには、ストラップが必要になります。首から下げるストラップの本質はたったそれだけのことなのですが、作業環境や組織のあり方によって、あるいはまた多機能化・多用途化しているIDカードの性格によって、さらにはIDカードが用いられる場面・局面によっては思いがけない効果を発揮することもあるのです。

組織への帰属意識を高める

ネックっストラップを掛けてパソコンを操作する男性たち

たとえば、新卒採用社員の入社式というシーンを想像してみてください。新入社員たちの気持ちを、です。インターンシップや入社前研修などの形ですでに会社の敷居をまたいでいる新入社員もいるでしょうが、「この会社に入った」と本当に実感するのは、「社員証を手渡されたとき」ではないでしょうか。

顔写真入りの社員証さえあれば、毎朝オフィスビル玄関で、警備員さんや受付が笑顔で迎えてくれて、何も言わずに中に入れてくれるのです。社員証をもらえたということは、「組織の一員になった」ということなのです。

ここで「ストラップ」は、社員の組織への帰属意識をさりげなく演出し高めています。

別の例も挙げましょう。

新入社員ではない人も、たとえば昼休みで社外にランチをとりに出たとき、カード本体は不特定多数の人に見られないように胸ポケットに隠すものの、ストラップそのものは首から外すことなく、かけたままにしている人が多いのではないでしょうか。

どのような気持ちで外さずかけたままにしているのでしょう。単に外すのがめんどうなだけでしょうか。そうかもしれませんが、やはり「外したくない、かけたままでいたい」という気持ちがあるように思えてなりません。その気持ちがどこから来るかといえば、それは会社という組織への帰属意識からであり、職を持ち懸命にはたらいているという誇りからでしょう。

たかがストラップ。しかしそれは、組織の一員である自覚と誇りを「象徴」しているのです。

コミュニケーションツールとしてのストラップ・イベントで

ネットストラップを掛けたスタッフ

幕張メッセや東京ビッグサイトのような大型コンベンションセンターでおこなわれる博覧会、見本市のようなイベントに参加するとき、そのイベントに向けた特別なストラップをスタッフに支給すると効果が上がることがあります。

たとえば、日常オフィスで社員証を吊るのにつかうものよりもずっと幅広の、巾20ミリほどもあるストラップがあります。そうしたストラップの側面に、社名や社章、ロゴなどをたくさんプリントすることができます。

そのようなストラップを用意すると、それはひとつのコミュニケーションツールとしてたいへん有効に機能します。

なんといっても目立ちますので、ひとつにはコンベンションセンター職員との「あうんの呼吸」が成り立ちやすくなります。会場裏手の搬入口で、会場職員に来意を告げ入場許可を求めるプロセスが簡単、短時間になるでしょう。一度「仁義」を通しておけば、あとは出入り自由です。同じことは会場内の一般出入り口での通行にも言えます。

会場内で、来場した一般客とのコミュニケーションにも一役買います。なにしろ目立ちますから、自社製品・サービスに興味を持った顧客が一目でスタッフだとわかり、声をかけやすくなります。商談につながる機会を増やしてくれるのです。

たかがストラップ。しかしそれは、コミュニケーションを助け商機を広げます。

コミュニケーションツールとしてのストラップ・連携プレーの円滑化

ハイタッチ

ある作業現場で、どのスタッフがなにをするか、あるいは、どの顧客になにをすべきかと表示するために、ストラップの色分けが有効に機能することがあります。これもストラップの「色」が1種のメッセージとなって無言のコミュニケーションに役立てられている場合のことです。

たとえば医療機関では、ドクター、ナース、パラメディカル、ボランティアなどの職分ごとに色分けしたストラップを付けてもらうと、救急外来の現場などでは「必要な人員は足りているか、足りていない人員はどの職分か」が一目でわかります。緊急対応の効率が良くなるでしょう。

災害に見舞われるなどして、傷病者が多数同時に発生した場合には、その傷病者に対して識別タグを付け、なにをすべきかの目安を現場医療スタッフ間で共有する仕組みがあります。「トリアージタグ」といい、「色」で表現する1種のメッセージという意味では「色分けストラップ」とはたらきは同じです。

トリアージタグは3枚つづりのタテ型カード状の札で、傷病者の腕や手首などわかりやすいところに輪ゴムで付けるようになっています。名前ほか、傷病者の基本情報、意識レベルや呼吸数、脈拍などバイタルサインを書く欄が上3分の2の範囲にありますが、わからないことも多いのですべて書き込むことは求められていません。

肝心なのはタグの下3分の1の部分で、そこには上から「黒」、「赤」、「黄」、「緑」に色分けされた帯がプリントされ、それぞれの境目がミシン目で切り離せるようになっています。「どの色の帯を残したか」によって、その傷病者の状態と「すべきこと」を表示しているのです。

まったく切り取らずにすべて残している場合は「緑」で、「軽症なのですぐに処置が必要ではない」ことを示します。緑の帯を切り離した場合は「黄」で、「中等度・すぐに治療しなくても命に危険はないが、長時間放置してはいけない」ことをあらわします。黄色の帯を切り離した状態は「赤」で、「重症であるが、ただちに救急医療機関で治療すれば救命できる」ことを表示します。最後に赤まで切り離すと「黒」ということになります。これは、「身体や頭部に重大な損傷があり、すでに生命反応がなくなりかかっている、またはすでに死亡している」ことを示します。

冷酷な現実ですが、「黒」の傷病者の処置は「後回し」になります。緊急事態で傷病者が同時多発している状況下では、「黒」の状態の傷病者に投じる人的資源、医療資源は無駄に終わることが多いのです。そのため、同じ人的資源、医療資源を向けるのであれば、助かる可能性がある「赤」の人に優先的に振り向けた方が、結果的により多くの人命を救うことになる……という考え方から、このトリアージタグは世界中で採られている方式なのです。

すこし極端な例になってしまったかもしれませんが、災害時など、「修羅場」とも言うべき状況で限りある医療資源と人的資源の活用効率をギリギリまで高め、ひとりでも多くの人の生命を救うことを目指す仕組みとして、「色分け」は応用されているわけです。

一般の会社の作業現場でも、色分けを応用することで組織的連携機能を最大限に円滑化するシステムをつくることは可能でしょう。

たかがストラップですが、組織力を最適化することにつながるのです。

来客のアテンドにも活用できる

ネックストラップで使用される用紙

来客やパートナー企業の職員など、外部から来たヴィジターに特別な色のストラップのカードを付けてもらうと、事情を知らない自社員にも「この人は来客なので失礼のないように」というメッセージが伝わります。自分とは無関係な来客であるとしても、すれちがうときに「軽い会釈と笑顔を」と指導しておくと、来客の印象が良くなることは疑いありません。こうした小さなことの積み重ねは、かならずビジネスにもプラスになるでしょう。